精神脱獄

なぜ新渡戸スクールに?

分野や文化で屈折しない「万人に伝える力」を養いたかったから。私はここ何年か生物学に勤しんでいる。ディスカッションの相手もプレゼンテーションの聴衆も,生物学に生きてきた人々。そんな環境に何年も曝されたら,生物学にとりわけ思い入れのない人々(おそらく地球上の99.999%以上)と意思疎通できなくなる日は近いだろう。私の知識や成果は,生物学とよばれる檻の中でしか生きられないのか? 万物をいちいち分野や文化で区切り,その一つに閉じこもって一度きりの生涯を終えるなんて,窒息死もはなはだしい。頭がまだ柔らかいうちにいろんな世界を知っておけば,今後どんなに狭い部屋でどんなに小さな現象を追おうとも,その価値が万人にどう伝わるのかを広大な視野で見通すことができる。鉄格子だらけの毎日に芽吹いた脱獄欲が,私を新渡戸スクールへと導いた。

 

新渡戸スクールでどんな発見が?

ずばり,チームワークの大切さ。新渡戸スクールでは毎回チームで動く。だがあいにく私は閉鎖的ジコチューである。自分の満足できないやり方が混ざってくるのが不快なので,他人と協同するより一人で完遂したほうが精神衛生的に宜しい。じゃあ全部お任せしますって言われるだろうけど,自分の時間だけ不公平に削るのも嫌なので,チームを改めて見てみる。すると,例えば経営学(私は知識ゼロ)に親しいメンバーもいるし,とある国(名前しか知らなかった)で育ったメンバーもいるわけだ。狭い文化の狭い分野でうろうろしていた私の頭脳には100年あっても転がり込まない見識が,チームメンバーの頭脳には埋まっている。そんなお宝を異物混入のごとく毛嫌いしていた私は,異次元へ一人走り続け,私以外の全人類にとってどうでもいい結果に満足していたのかもしれない。旅路を共にする頭脳の数が多ければ多いほど,私の頭脳が世界のどこらへんで輝くのか,その輝きが人類の頭脳にどう映るのか,マジメに考える回数が増える。すなわちチームワークこそが「万人に伝える力」を磨き,果ては世のあらゆる鉄格子を打ち砕くはずだ。私に脱獄術を悟らせた新渡戸スクール,あなたにも何かを悟らせるに違いない。

 

脇田 大輝

生命科学院 博士後期課程

新渡戸スクール基礎プログラム2期生、新渡戸スクール上級プログラム1期生

 

(The English version is available from here.)